滞納住宅ローン対策としての任意売却のメリット

南越谷法律事務所の弁護士小池智康です。

 

このコラムは、越谷市、春日部市、草加市、三郷市、八潮市、川口市、さいたま市、足立区等の地域の皆様に情報提供することを目的としています。

 

前回までのコラムで、任意売却と残債務の処理に関し、①任意売却をする場合は、必ず同時に残債務の処理方法を考える必要があること、②住宅ローンを滞納している方の債務を処理する場合、任意売却と併せて自己破産を申し立てることがおおい、との趣旨を記載しました。

 

そこで、今回のコラムでは、任意売却+自己破産(免責)申立の場合の任意売却のメリットを簡単にまとめてみたいと思います。

 

任意売却のメリットとして、よく挙げられるのは『競売より高く売れるので、競売になるより債務額を圧縮できる』ということだと思われます。

任意売却の効果だけを見れば、一般的には競売より高く売れるというのは事実なので問題ないのですが、自己破産の申立により、免責を受けるということを視野にいれると、上記の命題は必ずしも正しくない、ということになります。

なぜならば、自宅が競売され債務が2000万円残ったとしても、自己破産の申立をして、免責されれば、この残債務の支払義務はなくなるので、債務者の立場としては、任意売却で自宅を高く売却するという必要性は高くないからです。

そうすると、自己破産をする場合に任意売却する意味ってあるの?との疑問も生じますが、私は、以下のようなメリットがあると考えています。

 

【任意売却のメリットその①~自宅を売却するタイミングを自分で決められること~】

 

住宅ローンを滞納して、自宅を手放す場合、引っ越しにより、生活の本拠が変わることになります。各種届出はもちろん、職場との位置関係、子供の学校の問題など多くの問題を処理しなければなりません。任意売却は、買い手がつく時期は別としても、自宅を売りに出す時期は自分で決めることができるので、引っ越しにより顕在化する問題に対処するために時間的余裕を確保できます。

これに対し、競売により自宅の立ち退きをする場合は、そもそも、競売を申し立てるか否かは債権者が決めることですので、住宅ローン債務者がにはコントロールできません。そのため、競売が申し立てられてから後手後手で対処する、ということになりがちです。

また、住宅ローン債務者の方が生活再建に主体的に取り組むという意味で任意売却が優れているようにも感じます(これはあくまで私の主観ですが・・)。

すなわち、自己破産を決意した時点で、債務を処理するという意思を固めている以上、いずれ処分される自宅に何時までも住み続けるよりも、早期に売却することで過去の債務にとらわれた心理状態から、今後の生活再建に気持ちが向かっていく、という効果があるように感じます。

 

いずれにしても、自宅を手放すタイミングについての決定権がある、ということが任意売却のメリットだということは間違いないと思います。

 

【任意売却のメリットその②~任意売却の代金から引っ越し費用を受領できること~】

 

住宅ローンを滞納した場合の任意売却に関する実務上の運用では、多くの場合、任意売却代金から一定額の引っ越し費用を受領することができます。

住宅ローンを滞納するような経済状況で、引っ越し代金を準備するのは困難なことが多いため、この点も任意売却のメリットといえます。

 

ただし、引っ越し代金は、競売により自宅が売却された場合でも支払われることがあるため、競売との比較では、任意売却のメリットと言い切れない気もします。

しかし、競売の場合は、自宅が売却されてから新たな所有者との間で交渉して引っ越し費用を受領できる場合がということですので、引っ越し費用を支払ってもらえず、引渡命令の申し立てをされてしまう場合もあります(民事執行法83条)。

これに対し、任意売却の場合は、自宅を売却するか否かの交渉の一部として引っ越し費用についての協議をするので競売のような心配はありません。したがって、任意売却において引っ越し費用を受領できるということは、競売との比較においても任意売却のメリットと考えていいと思います。

 

【任意売却のメリットその③~租税の滞納分を解消できる場合があること~】

 

任意売却のメリットとして、競売になった場合には配当の対象にならないような租税を任意売却代金から支払いことができる場合があるということがあります。

住宅ローンを滞納して自宅が競売になる場合、固定資産税や住民税を滞納しているというケースはよくあります。

これらの税金は、破産申立をして、免責を受けた場合でも、免責の対象になりません(破産法253条1項1号)。

したがって、破産手続で財団債権・優先的破産債権として支払いがなされない限り、破産手続終了後も支払い義務が残ることになります。

そのため、破産を申し立てる場合でも可能な限り、租税の滞納は解消したい、とのニーズがあります。

 

このようなニーズを背景として、次のような場合は、任意売却代金から滞納租税の支払いができるというメリットが実現する場合があります。

【事案】

①自宅に住宅ローン債権者を抵当権者とする一番抵当権が設定されている。

②自宅を競売・任意売却のいずれで処分しても住宅ローンの完済すらできない。

③租税(固定資産税・住民税等)を滞納いており、自宅に差押がなされている。

④一番抵当権の設定登記は、③の差押にかかる債権の法定納期限より前になされている。

 

このような場合、租税債権の差押は、一番抵当権(住宅ローン)に優先できないため、仮に、自宅が競売になっても配当を受けることはできません(つまり、租税の滞納は解消されません)。

しかし、任意売却の場合、配当が見込まれない租税債権者であっても、この債権者が同意しない限り、原則、差押登記を抹消することはできません。

そうすると、任意売却をする場合、競売であれば配当ができない租税債権者に対しても任意売却代金から一定額を支払わない限り、任意売却が成立しないということになります。

そして、一般的には、住宅ローン債権者は、任意売却により早期かつ競売よりも多額の債権回収を実現したいとの意向を有していることから租税債権者に対しては、滞納額の一部ないし全額の配当を認める傾向があります(この背景には、住宅ローン債権者が租税の公益性を考慮しているということもあると思われます)。

この結果、上記の事案では、競売では解消できなかった滞納租税の一部または全部を解消することができる可能性がある、ということになります。

これは、破産申立(免責)でも免れることができない滞納租税対策としてなかなかのメリットだと思います。

 

任意売却により、

①引っ越しのタイミングを自分で決定する。

②引っ越し費用を任意売却代金から受領する。

③滞納租税(固定資産税・住民税等)を任意売却代金から支払って解消する。

 

その上で、住宅ローンは、自己破産(免責)で処理する、ということは債務整理の方法としては、有効な手法であると思います。

 

以上のように、任意売却は多くのメリットがある方法ですので、住宅ローン問題解消に任意売却を利用していただきたいと思う次第です。

弁護士 小池智康

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