住宅ローン滞納対策としての任意売却と残債務の処理~その①~

南越谷法律事務所の弁護士小池智康です。

 

このコラムは、埼玉県越谷市、春日部市、草加市、三郷市、吉川市、八潮市、川口市、さいたま市、足立区(北千住・西新井)等を対象に情報提供をすることを目的としています。 

今回のテーマは任意売却と残債の整理についてです。

弁護士として借金の整理にかかわっていると不動産の任意売却は避けては通れません。法人の破産であれば、抵当権が設定された本社ビルや工場を売却することがありますし、住宅ローンの支払いができなくなった自宅を売却することもあります。

近年は、住宅ローンの支払いができなくなった個人の方を対象にして任意売却を請け負う業者もおおく存在しており、任意売却に関する市場も整備されてきたように感じます。

他方で、任意売却に関する正しい知識・経験を有していない、または、虚偽の説明をしている怪しげな業者がいることも事実です。

以下では、今までに私が遭遇した怪しげな業者の例を挙げてみたいと思います。

 

【怪しげな業者・その①】

「任意売却した後に残った債務は返済しなくていい」という業者

どこにそんな根拠があるのか?とびっくりしてしまいますが、堂々と書面でこのような説明をしている業者が現実に存在しました。

任意売却は、不動産を売却してその代金を抵当権を設定している債権者への返済にあてることになりますが、この際、売却代金が債権額を上回

れば借金はなくなりますし、債権額を下回れば債務が残ることになります。任意売却だから残債があっても支払わなくていい、という根拠はどこに

もありません。

 

【怪しげな業者・その②】

「債務が残っても放置しておけば時効になる」という業者

任意売却をすれば残った債務は支払わなくてよい、という業者よりはまだましかもしれませんが、この話もうかつに信用はできません。

 

任意売却をして債務が残った場合、債権者(通常は金融機関)は残債の額を把握しており、定期的に請求や支払計画の提示を求められます。

して、時効が近くなれば、時効を中断するために債務の承認を求めたり、訴訟を起こしたりという手段をとってきます。

 

したがって、金融機関に対する債務はそう簡単に時効にはなりません。

しかも、金融機関などの債権者からは、定期的に支払いを求められるため、借金のストレスを抱えた状態を継続することになります。

 

【怪しげな業者・その③】

「任意売却すれば借金が減るから生活が楽になる」と断言する業者

 

任意売却をすれば、確かに借金は減りますので、借金の返済は楽になります。しかし、自宅を任意売却して賃貸に住み替える場合、賃料を支払

うことになりますので必ずしも生活が楽になるとは限りません。特に、家族が多い場合、それなりに部屋数のある物件を借りることになりますので

この傾向は顕著です。

 

結局、任意売却というのは、不動産を売却してその代金を返済にあてるというだけですので、任意売却をすれば残債がでても支払いをしなくてい

い、必ず生活が楽になるということが保証されるはずがないのです。

 

任意売却は、借金を整理する方法の一つではありますが、任意売却で借金問題が全て解決する訳ではありません。

任意売却をする際には、必ず残った債務の処理方法も検討しておきましょう。

 

次回は任意売却後の残債務の処理方法を検討したいと思います。